不動産は物理的な分割ができないため、複数の相続人によって共有名義とすることも少なくありません。
しかし、不動産を共有相続した場合、のちにトラブルの原因となる可能性があります。
今回は、不動産を共有相続した場合に起こりえるトラブルについて解説していきますので、不動産を相続予定の方などは、ぜひ参考にしてみてください。
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弊社へのお問い合わせはこちら不動産の共有相続後の合意形成に関するトラブル
不動産を共有相続した際、管理や売却に関しての合意形成が難しくなり、トラブルに発展するケースも多く見受けられます。
なぜトラブルが起きてしまうのか、具体的に見ていきましょう。
共有相続した不動産の売却や賃貸
共有相続した不動産を売却するにあたって共有者全員の同意が必要なため、誰か1人でも賛成していない場合は売却することができません。
また、共有相続した不動産を賃貸にする場合も同様で、共有者全員の同意が得られないと実行することができないのです。
共有相続した不動産の売却や賃貸は、共有持分の割合が異なっていても、権限については皆平等となります。
たとえば、3人で共有相続したとして、1人が8割、他2人が1割づつ相続したとして、8割相続した者の権限が大きいわけではありません。
共有相続した共有物に関して、民法第251条では以下のように定められています。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない
共有相続した不動産の使用や管理
不動産の売却や賃貸以外にも、全員の同意を得られなければできないことがあります。
また、過半数の同意を得られればできること、単独でできることもありますのでチェックしていきましょう。
増改築や建て替えをする「変更行為」は、全員の同意が必要です。
また、賃貸として貸し出すことに関しては全員の同意が必要ですが、その後の賃貸借契約の締結や解除という「管理行為」は、過半数の同意があればおこなうことができます。
そして、不法占拠者に対する明け渡し請求や修理などの「保存行為」は単独の判断でおこなうことが可能です。
上記のように、不動産の使用や管理に関しては、単独でできることが限られています。
共有持分に応じて賃料が発生することもある
共有相続した不動産は、共有持分に関わらず単独で不動産の全部を使用することが可能です。
しかし、たとえば3名で相続したうちの1名が共有相続した不動産に住む場合、共有持分に応じて他の共有者に賃料相当額を支払う必要があります。
その場合、賃料額をめぐってトラブルに発展する可能性もあるのです。
共有者と連絡が取れなくなる可能性がある
不動産を共有相続する場合、疎遠になっている親族と共有することも少なくはありません。
そのような場合、突然連絡が取れなくなる可能性もありえます。
共有者と連絡が取れない場合、同意を得られないため、売却が難しくなってしまうのです。
このように、合意形成がむずかしいとトラブルが発生しやすくなりますので、疎遠となっている親族との共有相続はあまりおすすめできません。
メガ共有によって起こる不動産共有相続のトラブル
近年、不動産の相続人が100人を超える「メガ共有」というテーマを扱ったテレビ番組がありました。
相続人が100人超えというのは大袈裟と思えるかもしれませんが、誰にでも起こりえることなのです。
なぜこのようなことが起こってしまうのか、メガ共有の問題について見ていきましょう。
なぜ多くの共有者がいるのか?
相続した不動産の相続登記をおこなわずに放置しているというケースは少なくはありません。
その際、共有者が増えていくことになるのです。
たとえば、不動産所有者が亡くなった際に、最初は5人で共有相続したとします。
しかし、名義変更せずに放置した場合、その5人が亡くなった場合、それぞれの相続人で共有相続したとしたらどうなるでしょう。
各相続者につき5人の相続人がいた場合、共有相続人が25人も増えてしまうことになります。
つまり、2次相続、3次相続と共有相続を繰り返すことによって、メガ共有へと繋がってしまうのです。
報道にあったように100人越えとまではいかないものの、数十人で共有しているというケースは少なくはありません。
当然、売却が難しくなってしまうことは予想できるでしょう。
メガ相続により相続者が全国に散ってしまい、所有者の特定が難しい不動産に多数存在しています。
現在、所有者不明の土地は国内で九州以上の面積があるといわれ、土地開発などにおいて大きな社会問題となっているのです。
以上のことから、空き家問題が起こる背景として、メガ共有が原因の一つと言われています。
相続法の改正
上記のようなメガ共有が原因となり、日本には売却の難しい空き家が多数存在します。
そのような問題を解決する目的もあり、令和3年の民法改正で相続や共有制度の見直しがおこなわれました。
この改正によって、相続登記が義務化されています。
メガ共有は、相続登記をおこなわず放置していることが原因です。
相続登記が義務化されたことにより、メガ共有への発展を避けることができると考えられます。
共有不動産の共有物分割請求訴訟とは?
最後に、共有相続した不動産のトラブル例として、共有物分割請求訴訟についてご紹介します。
共有物分割請求とは?
共有物分割請求とは、不動産などを共有相続した後に、共有状態を解消することを求める権利のことです。
共有状態の解消を求めた場合、強制的に共有状態を解消しなければいけません。
共有物分割請求は、共有状態を解消する方法として、物理的に分割することが原則となっています。
不動産の共有物分割請求で共有状態を解消する方法は、以下のとおりです。
現物分割
現物分割とは、共有物を物理的に分割する方法です。
共有物分割請求は物理的に分割することが原則とされていますが、不動産の場合は物理的に分割することが難しいため、実際には現物分割はあまりおこなわれていません。
代償分割
代償分割とは、共有者の持分を他の共有者が買い取ることで共有状態を解消するという方法です。
たとえば、相続人が2人いたとして、1人は住み続けたい、もう1人は現金化したい、という場合にメリットがあります。
しかし、代償分割では金額をめぐってトラブルが起きることも少なくはありません。
原則として、当事者同士の話し合いて決めますが、決まらない場合は裁判所が選任する不動産鑑定士の鑑定価格によって決めることが可能です。
換価分割
換価分割とは、共有物を売却して持分割合に応じて分配して共有状態を解消する方法です。
共有者間の話し合いや、不動産会社に仲介に入ってもらう方法で売却したり、競売手続きをとって売却する方法もあります。
共有物分割請求訴訟
共有物分割請求は、共有者の協議によって全員の合意があれば、スムーズな分割が可能です。
しかし、協議で決定できない場合は、裁判所に適切な分割方法を決定してもらう必要があり、これを共有物分割請求訴訟といいます。
共有物分割請求訴訟は、裁判所の決定で分割がおこなわれるため、望まない分割方法を命じられる可能性もあるのです。
たとえば、競売が命じられた場合は、市場価格よりも安い価格で売却されることになります。
しかし、共有物分割請求は判決ではなく和解により終結することが多い訴訟です。
分割内容を明確にして、和解に向けて主張をおこなうことが重要といえるでしょう。
まとめ
今回は、不動産の共有相続後に起こりえるトラブル例をご紹介しました。
不動産を共有相続した場合、さまざまなトラブルが発生する可能性があり、訴訟に発展することもあるのです。
共有相続後の売却が困難となる恐れもありますので、不動産を相続する際はできるだけ単独相続か、売却して分割する方法をおすすめします。
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