目次
住宅は一生のうちでも1、2を争う高額な買い物となり、その際に親や祖父母から資金援助を受けることは珍しくありません。
援助する金額も大きくなりがちですが、このようなケースで資金援助を受けた場合でも贈与税が発生するのかは気になるところではないでしょうか?
今回は、住宅の購入時に資金援助を受けた場合の「非課税枠」について、限度額や利用できる条件、申請時のポイントなどを解説します。
\お気軽にご相談ください!/
弊社へのお問い合わせはこちら住宅を購入する際に資金援助(贈与)があった場合の非課税枠とは
通常、親に限らずほかの個人から年間基礎控除分である110万円を超える資金援助を受けた場合には、贈与税が発生します。
例えば親から子に300万円贈与があった場合、基礎控除額の110万円を差し引いた190万円が贈与税の対象になります。
200万円以下の贈与税率は10%なので、190万円なら19万円の贈与税を納めなければなりません。
しかし住宅を購入する際の資金援助に関しては特例が設けられていて、一定額までは贈与税がかからないとされています。
住宅の購入資金は高額になるため、両親や祖父母に資金援助から資金援助を受ける人は多くいます。
そのようなケースでも贈与税を徴収していては負担が大きく、家を購入できなくなる人が増えてしまう恐れがあり、特例が設けられているのです。
住宅購入時の資金援助で贈与税が非課税になる特例は、「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」と呼ばれます。
非課税限度額は、新築する住宅の種類によって以下のように異なります。
省エネ等住宅:1,500万円
上記以外の住宅:1,000万円
(令和2年4月1日~令和3年12月31日までに契約を締結した場合)
省エネ等住宅とは、
●省エネルギー性能が高い
●耐震性能が高い
●バリアフリー性能が高い
のいずれかの性能を満たす住宅が該当します。
この特例を受けるための条件については、次章で詳しく解説していきます。
住宅の購入時に資金援助を受けた場合に非課税枠を使う条件
住宅の購入時に贈与を受けても、最大で1,500万円までは非課税になることがわかりました。
しかしこの非課税枠を使うには、以下のようなさまざまな条件が設けられています。
贈与するのは、贈与を受ける人の直系卑属である
直系卑属とは、贈与を受ける人の父母、祖父母、あるいは子や孫などが該当します。
(養子縁組をしている場合も含みます。)
配偶者の両親は、直系卑属とはならないので特例の対象とはなりません。
贈与を受けた年の1月1日時点で、20歳以上であり、その年の年間合計所得金額が2,000万円以下であること
なお新築住宅の家屋の床面積が、50㎡以上240㎡未満の場合は1,000万円以下であることが条件になります。
自分の配偶者や親族などから譲り受けたものではないこと
さらに新築や中古住宅の購入に関しては、以下のような条件が課されます。
新築または中古住宅の共通要件
1. 新築または取得した住宅の、登記簿上の床面積(マンションなどの場合は専有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下で、店舗併用住宅の場合2分の1以上が贈与を受ける人の居住用とされること
2. 中古住宅の場合、次のいずれかに該当すること
①建築後使用されたことがない住宅用の家屋である
②建築後使用されたことがある住宅用家屋である場合は、20年以内(耐火建築物なら25年以内)に建築されたものであること
③上記を超えている場合、耐震基準を満たしていることを示す書類がある、既存住宅売買瑕疵保険に加入している、もしくは取得日までに耐震改修工事の申請をして居住の日までに工事を完了したうえで、耐震基準を満たすことを証明する書類があること
ここで紹介した以外にもいろいろな条件があるので、特例の適用を受けるためには条件をすべて満たしているかを確認するようにしましょう。
住宅の購入で贈与を受けた場合に非課税枠を利用する際のポイント
住宅の購入時に両親や祖父母などから贈与を受けたときに、非課税枠を利用する際のポイントを5つ解説します。
贈与を受けるのは居住開始前でなければならない
「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」が適用されるためには、居住開始前、つまり引越し前に贈与を受けている必要があることがポイントです。
対象となる家に住み始めてから贈与を受けても、非課税の特例の対象とはなりません。
それも贈与を受けた年の翌年の3月15日までに新居に住み始めることも条件となっています。
あまり早いタイミング、例えば土地を購入する段階で贈与を受けると、翌年の3月15日にはまだ家居住を開始できない可能性があるでしょう。
特例を受けて贈与税を節税しようと考えるなら、贈与のタイミングには注意が必要です。
贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住を開始しなければならない
特例が適用されるためには、贈与を受けた翌年の3月15日までに対象の家に住み始めなければならないことも押さえておくべきポイントです。
しかし家はできているものの、仕事や子どもの学校の都合でなかなか引越しできないこともあるでしょう。
そのようなケースでは、入居の見込みがあると判断された場合に限り、その年の12月31日までに引越して居住を開始すると適用が認められる可能性があります。
ただし、どれだけ遅くなっても、贈与を受けた翌年の12月31日を過ぎると特例は認められません。
また居住の実態があっても住民票が移っていなければ、非課税の対象外とされてしまう恐れがあるので、引越しと同時に住民票も新居に移動するようにしましょう。
期限内に確定申告を行う必要がある
特例を受けるためには、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに確定申告を行い、贈与税申告書などの書類を提出しなければならないこともポイントです。
「1,500万円以下だから非課税になる」と考え申告しなければ、申告漏れとしてペナルティーを受けることになります。
確定申告の期限を過ぎたときのペナルティー
非課税になるからと贈与税を申告しなかった場合に科されるペナルティーには、以下のようなものがあります。
●無申告加算税
無申告加算税は、申告期限を過ぎて申告したときに支払う罰金的意味合いを持つ税金です。
納付すべき贈与税額50万円までの金額に対して15%、50万円を超えた金額に対して20%の税率で加算されます。
●延滞税
申告期限に間に合わなかった場合、贈与税は申告書を提出したその日が納付期限となります。
つまり申告したその日に納税しないと、日割りで納税額が増えていきます。
●重加算税の可能性も
意図的に申告しなかったなど、申告漏れの内容が悪質なケースでは、重加算税が課される可能性があります。
社会状況により条件が緩和される場合がある
近年は新型コロナウイルス感染症の影響などもあり、予定通り工事を進められなかったり申告したくても非常事態宣言が出されていて外出できなかったりすることがあります。
その結果、居住期限までに入居できない、期限内に確定申告できないこともあるでしょう。
そのような場合には、特例の適用期限や贈与税の申告期限が延長されるケースがあります。
不測の事態が発生した場合には、国税庁のホームページを確認する、税務署に問い合わせるなどして対応を確認するようにしましょう。
まとめ
不動産を購入する際に両親や祖父母から資金援助を受けた場合には、条件に適合すれば「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」を受けられます。
特例が適用されるためには、居住開始前に贈与を受ける、贈与を受けた年の翌年3月31日までに住み始めるなどのポイントを押さえておきましょう。
また、非課税となり贈与税が発生しなくても、確定申告は必要な点には注意が必要です。